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●福井先生

 

端的な例としまして、道路行政が一つの例だと思いますが、戦後一生懸命道路を延長しようということで、随分お金をつくり行いましたが、日本人の性癖というか目標をつくり、達成するという、今のところ量的なことをし、質の部分を後でといいながらできない。そのため貧粗な2車線しかないようなものばかりが全国に広がり、後で拡幅しようにもコスト的に凄いコストがかかるということになっているようです、初めから思い切って30〜50年先を見越し、大きな幅で整備していれば、トータルのコストは安くなったと思います。
その後、経済が高度成長し、地価は跳ね上がり、用地取得が困難となっています。
また、欧米に比べ非常に私権を大事にしすぎているので、まるで札束を道路に敷きつめて用地買収するようなコストのかかる仕組みとなっています。それで得られた開発益というものが、還元されるようなシステムになっているかというと、アメリカに比べ、日本は全くなっていないようにも思えます。とりあえず目標を達成しようという日本の真面目な心が都市のインフラという面からみますと、非常に貧粗なものを日本全国的に津々浦々つくってしまっているということだと思います。その被害者が公共交通であり、一般市民であり、マイカーもその一つであると言えましょう。

 

●藤田コーディネーター

 

太田さんは今の指摘にあるような、市街地が段々できあがっていく、そこでモータリゼーションが後から起こってきた、これが福井さん流にいうとりあえず的な道路交通になるというが、この問題をどのように考えましょうか。新しい都市をつくるのであれば問題はなさそうですが。

 

●太田先生

 

交通というのは都市計画の一部であり、その辺の認識というか、取組が非常に遅れているという一つの例だろうと思います。
市街地をつくるという時には、基本的な公園等と同様に交通施設というものも大変大きな要素ですが、わが国の都市計画や土地利用計画の中では必ずしもそういった一体的な成分の中で削りとられており、次第にスプロール化してきたという面がかなり強いと思います。そういう点からも都市計画との一体化というのが一つのポイントではないかと思います。

 

●藤田コーディネーター

 

今までの話の中にマイカーと公共交通機関のいわば対立関係、マイカー同志の対立関係が現実に起こっているという指摘がありましたが、そこで改めて公共交通という選択肢についてもう少し深く考える必要があるのではないかと思います。まちづくりは環境政策において公共交通が選択肢としてもう少し光があたってもよいのではないかという事にもなってきます。
そこで公共交通本来の利便性を活かし、都市交通問題の緩和に成功した幾つかの例をVTRでご覧いただき理解を深めたいと思います。

 

―VTR上映―

 

 

 

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